日本損害保険協会(損保協、舩曵真一郎会長=三井住友海上火災保険社長)は、「損害保険会社による便宜供与適正化ガイドライン」を策定した。損保会社がディーラーを含む保険代理店などに対する取り組みを検討する上で、便宜供与の適否を判断するための基本的な考え方(判断の目安)を整理した。法的拘束力を持つものではないが、損保各社には社内規則などの策定・実践に役立ててもらう。損保協内に通報窓口も設置し、過度な便宜供与の防止を図る。
金融庁による「保険会社向けの総合的な監督指針」で、過度な便宜供与の防止が定められた。これに伴い、損保協としてもガイドラインを設ける必要があると判断した。
便宜供与の適正化に当たって損保会社が順守すべき法令などを明記した上で、損保会社の役職員が便宜供与の適否を判断するための目安を記載した。保険業法や独占禁止法、その他の関係法令などを踏まえ、必要に応じて適宜見直す。
損保会社による便宜供与の適正化の対象・範囲は、代理店に加え、保険募集人である代理店の役員や使用人も含む。
損保会社による便宜供与は、代理店との関係維持・強化や保険販売の拡大などを目的に損保業界の商習慣として定着・浸透してきた。便宜供与の形態や程度は、基本的には当事者の自主判断に委ねられる。ただ、便宜供与の中には一部に行き過ぎたケースがあり、金融庁の有識者会議でも「顧客の適切な商品選択の機会」や「公正な競争」を阻害する要因の一つとの指摘も受けていた。
監督指針では、顧客の適切な商品選択の機会が阻害される過度な便宜供与として、「自社の保険商品の優先的な取り扱いを誘引する便宜供与」と「実質的に自社の保険商品の優先的な取り扱いを誘引する便宜供与」について防止する必要があると示されている。
これらを踏まえ、損保協は過度の便宜供与を再定義。「約定する行為(ニギリ)」と「達成基準を課す行為(ノルマ)」は、過度の便宜供与に該当するとした。「社有車の購入」や「代理店への顧客紹介」といった保険代理業務以外などの便宜供与については、行為の「必要性・適正性・公平性・合理性」が認められるかを判断基準とする。
ただ、ニギリやノルマ以外の行為における解釈は個別の判断によるばらつきが生じやすい。そのため、損保協は主な類型ごとに代表的な便宜供与の事例を取り上げ、判断基準を解説する「想定事例集」も作成した。掲載されている事例の判断基準に、法的拘束力はない。
ガイドラインと想定事例集は、損保協のホームページから入手できる。
また、ガイドラインの策定・公表後の運用実態の把握・検証を目的に、損保協内に過度の便宜供与が疑われる事案を損保会社の役職員から受け付ける通報窓口を設置する。損保協は、通報の相手方となった損保会社に通報内容を通知する。通知を受けた損保会社は通報内容に基づき事実確認を行い、過度の便宜供与かどうかを判断の上、改善に取り組む。
通報窓口で入手した情報は、損保会社に共有するほか、損保協に設置した「代理店業務品質評議会」と金融庁に定期的に報告する。2026年度以降、同評議会にも設置している通報窓口と一本化し、一般消費者や代理店を含めて業務品質について広く通報を受け付ける予定としている。


















