オートバックスセブンが、大きな構造改革に乗り出している。同社は2032年度に、売上高で23年度実績(2298億円)の倍増以上となる5千億円を目指す長期ビジョンを策定。この具体策として26年度までの3カ年の新たな中期経営計画を始動した。長年、主戦場としてきたカー用品市場は、消費者の購買動向の変化などで伸び悩んで久しい。一方、電動化や自動運転といった技術進化のさなかにもあり、市場や顧客のニーズを先取りしなければ生き残れないとの危機感もある。将来も必要とされ続けるオートバックスの在り方を探るチャレンジが今、始まった。
「既存の事業基盤を強化しつつ、新たな分野の種もまく」と、堀井勇吾社長は新中計を重要視する。23年に公表した長期ビジョンを実現するための土台となるものであり、この達成状況が揺らげば、長期ビジョンの行方も大きく左右するためだ。
ただ、堀井社長は「簡単にできる目標ではない」と、気を引き締める。中計では26年度に売上高で23年度比21.8%増となる2800億円を目指す。この実現には、07年度(08年3月期)に記録した過去最高の2664億円を上回る必要がある。さらに、この10年、2500億円に届いていない同社にとってはかなり高いハードルだからだ。
同社がこうした大きな目標に挑む背景には、事業環境の大きな変化がある。同社が主戦場としているカー用品市場は純正装着品の充実などもあり縮小傾向が続く。「カー用品販売が長期間伸び悩んだ」(藤原伸一専務)ことが、これまでの業績の停滞感につながっていた。同社も手をこまねいていたわけではなく、いくつか中計を策定するなど打開に取り組んだ。しかし、未達で終わることが少なくなかったとみられる。新中計で、こうした負の流れを断ち切る考えだ。
実は、今回の新中計や長期ビジョンに向け、同社は時間をかけて詳細を固めてきた。少子高齢化が進む国内のカー用品市場は、大きな回復が見込みにくい。これに、100年に一度とも言われる自動車産業の変革も重なり、将来像が極めて見通しにくい環境となった。このため、同社は19年度に「5カ年ローリングプラン」を立ち上げ、これを毎年見直しながら、将来計画の方向性を詰めてきた。
今回の中計では、事業のスタイルを大きく変えることはしない。堀井社長は「われわれが得意とする『小売り』と『卸売り』の2軸に集中する」ことにこだわる。さらに、倉林真也カートレーディング事業統括は「集客を増やすこともポイント」と説明する。そのためのキーワードが「タッチポイントの創出」だ。新規ユーザーの獲得に加え、既存ユーザーの顧客満足(CS)を高めていくためには、より多くのユーザーと接点を増やすことが欠かせない。同社ではグループで有するさまざまなチャンネルにおいて、この3年間だけで新拠点を100カ所も追加する考えだ。
新中計がスタートした24年は、同社が大阪府大東市に1号店「セブン東大阪」をオープンしてから50周年の節目に当たる。創業者である住野敏郎氏が掲げた社是「願望実現」に基づき、自家用車の普及と合わせてカスタムなどの需要を取り込んで成長してきた。時代や市場のトレンドが変わる中、「社会の交通の安全とお客さまの豊かな人生の実現」という願いをこれからもかなえるために、今、再び走り出した。



















